沖縄と海兵隊 (駐留の歴史的展開)

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屋良朝博・川名晋史・齊藤孝祐・野添文彬・山本章子

A5判上製/180頁
定価 本体2,700円+税
発行日 2016年5月27日
ISBN 9784845114641 C0031

なぜ沖縄でなくてはならないのか
1950年代から現在に至る在沖海兵隊の歴史を分析し、その実態をあぶりだす。

著者紹介

屋良朝博(やら ともひろ)
1962年沖縄県生まれ。フィリピン大学経済学部卒業。沖縄タイムス入社後、ハワイ東西センター客員研究員、論説委員を歴任。現在、沖縄国際大学非常勤講師。著書に、『砂上の同盟――米軍再編が明かすウソ』(沖縄タイムス社、2009年)、『誤解だらけの沖縄・米軍基地』(旬報社、2012年)。

川名晋史(かわな しんじ)
1979年北海道生まれ。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際政治学専攻博士後期課程修了。博士(国際政治学)。(財)平和・安全保障研究所客員研究員。著書に、『基地の政治学――戦後米国の海外基地拡大政策の起源』(白桃書房、2012年、国際安全保障学会最優秀出版奨励賞受賞)。

齊藤孝祐(さいとう こうすけ)
1980年千葉県生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科国際政治経済学専攻一貫制博士課程修了。博士(国際政治経済学)。横浜国立大学特任講師。主要論文に、「米国の安全保障政策における無人化兵器への取り組み――イノベーションの実行に伴う政策調整の諸問題」(『国際安全保障』第42巻第2 号、2014年9 月)。

野添文彬(のぞえ ふみあき)
1984年滋賀県生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。沖縄国際大学法学部地域行政学科准教授。主要論文に、「沖縄米軍基地の整理縮小をめぐる日米協議1976-1974年」(『国際安全保障』第41巻第2 号、2013年)。

山本章子(やまもと あきこ)
1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。第一法規編集者を経て、現在、沖縄国際大学非常勤講師。主要論文に、「米国の海外基地政策としての安保改定――ナッシュ・レポートをめぐる米国政府内の検討(『国際政治』第182 号、2015年11月)。

「はじめに」より

(はじめにより)
1 本書の目的
 本書は、米海兵隊の沖縄駐留の歴史的展開を実証的に検討した論文集である。
 米海兵隊は、海軍、空軍、陸軍と並ぶ米国の4 軍の一つだが、米軍総兵力約140万人のうち、陸軍約53万人、空軍約33万人、海軍約32万人に対して、約20万人と比較的小規模の軍隊である。海兵隊は、海上から敵地への上陸作戦、いわゆる「水陸両用作戦」を行い、本格的な陸上戦力の投入ができるよう橋頭堡を築くことを伝統的に基本任務としてきた。しかし冷戦終結以降、各国との共同演習や大規模災害救援・人道支援といった活動の比重が高まっている。2015年の海兵隊の政策文書によれば、このように各国との安全保障協力からさまざまな危機への対応、そして戦闘作戦まで幅広く即時に実行することのできる海兵隊の活動は、米国にとって軍事面だけでなく外交面でも重要だとされている。
 海兵隊の特徴として挙げられるのは、有事や危機の規模に応じて司令部、航空部隊、陸上部隊、兵站部隊を1 セットにして展開する、海兵空地任務部隊(MAGTF)という組織編制をとることである。MAGTF には、約5 万人の規模で大規模紛争に対応する海兵遠征軍(MEF)、約1 万5000人の規模でより小さな紛争に対応する海兵遠征旅団(MEB)、2000〜3000人の規模で紛争時の民間人救出や人道支援などを行う海兵遠征部隊(MEU)という組織形態がある。米海兵隊は、MAGTFの最大規模のMEFを3 つ有しているが、カリフォルニアに司令部を置く第1 海兵遠征軍(ⅠMEF)、ノースカロライナに司令部を置く第2 海兵遠征軍(ⅡMEF)に対して、第3 海兵遠征軍(ⅢMEF)の司令部は唯一、米国外の沖縄にある。ここからもわかるように、米海兵隊にとって沖縄は重要な拠点である。
 今日、日本には、約5 万人の米軍が駐留しているが、海兵隊は、在日米軍の中でも海軍に次いで二番目に大きな兵力であり、その9 割近くが沖縄に配備されている。沖縄には在日米軍の兵力の70.4%、米軍専用施設面積の73.8%が集中しており、在沖米軍の兵力の57.2%(約1 万5000 人)、施設面積の75.7%(約1 万7472ha)を占めているのが海兵隊にほかならない2。このように米海兵隊は、日本、そして沖縄に駐留する米軍の中でも大きなプレゼンスを有している。
 それゆえ、米海兵隊の沖縄駐留について検討することは、日本の安全保障や日米同盟を考える上で大きな意義を有する。そもそも日米同盟は、1951年に締結され、1960年に改定された日米安保条約をその基盤としてきたが、同条約は、日本が米国に基地を提供し、米国は軍隊を日本に提供して日本を防衛するという関係から成り立っていることから、「物と人との協力」といわれてきた3。したがって、在日米軍の中でも大きな規模を有する在沖海兵隊は、今なお「物と人との協力」を根幹とする日米同盟の実態を考える上で重要な素材となる。また、沖縄に在日米軍の多くが集中し、その在沖米軍の兵力と基地の大部分を海兵隊が占めていることを踏まえると、海兵隊の存在は、沖縄における基地問題を考える上でも不可欠の要素だといえる。
 しかし、米海兵隊の沖縄駐留の歴史について正面から分析した研究はこれまでほとんど存在しなかった。各章で見るように、先行研究では、米海兵隊がどのように沖縄に移駐したのか、また冷戦期に在沖海兵隊がどのような役割を担っていたのか、といった個別的な点が検討されるにとどまっていた。
 これに対して本書では、1950年代から2000年代にかけて、在沖海兵隊が再編される5 つの局面に注目し、なぜ海兵隊は沖縄に駐留し続けたのか、そしてその配備のあり方はいかに変容してきたか、日米の公開された政府文書や議会資料などを用いて、実証的に分析する。これを通して、在沖海兵隊の実態をあぶりだし、それによって日米同盟のあり方を照射することが本書の目的である。

主な目次

序章……野添文彬・山本章子
1 本書の目的
2 近年の在沖海兵隊をめぐる議論
3 米海兵隊の歴史
4 海兵隊沖縄駐留の歴史と各章の概要
5 本書の議論によって明らかになったこと
 (1)米軍再編計画に影響を与える要素/(2)日米同盟

第1 章  1950年代における海兵隊の沖縄移転……山本章子
はじめに
1 戦後初期の在沖米軍基地と海兵隊
2 極東米軍再編計画
 (1)極東米軍再編の背景/(2)初期の極東米軍再編計画
3 インドシナ独立と第一次台湾海峡危機
 (1)インドシナ独立/(2)第一次台湾海峡危機
4 陸上兵力削減計画の修正
 (1)海兵隊沖縄移転案の浮上/(2)第三海兵師団第九連隊の沖縄移転
5 在日米軍削減と海兵隊の沖縄集結
 (1)日本本土の反基地感情/(2)島ぐるみ闘争/(3)ジラード事件
6 在日・在沖米軍基地の役割の変化

第2 章  1960年代の海兵隊「撤退」計画にみる普天間の輪郭……川名晋史
はじめに
1 海兵隊の撤退、普天間の閉鎖
 (1)後景としての「ジョンソン・マケイン計画」/(2)国防総省の基地再編計画
2 バックラッシュ─沖縄の戦略的重要性と海軍省の計画
 (1)計画に対する軍部の反発
 (2)沖縄の戦略的価値─JSCの認識と「マスタープラン」
 (3)ベトナム戦争後における兵力態勢─海軍省の計画
3 撤退計画の撤回と普天間の機能強化
 (1)計画の概要/(2)再編対象
おわりに

第3 章  1970年代から1980年代における在沖海兵隊の再編・強化……野添文彬
はじめに
1 沖縄返還と在沖海兵隊
2 在沖海兵隊撤退をめぐる日米協議1972-1974年
3 ベトナム戦争終結と在沖海兵隊の再編1974-1976年
4 在沖海兵隊をめぐる日米防衛協力の拡大と普天間返還論の浮上
おわりに

第4 章 ポスト冷戦と在沖海兵隊……屋良朝博
はじめに
1 ポスト冷戦の31MEU
 (1)低強度紛争へ/(2)沖縄海兵隊のリストラ
2 湾岸を目指す 海軍・海兵隊戦略
 (1)ベースフォース
 (2)The Way A Head
 (3)“…From the Sea”フロームザシー
 (4)“Forward…from the Sea”フォワード…フロームザシー
 (5)「 エニィタイム、エニィウェア」21世紀のための海軍
3 沖縄基地問題
 (1)ターニングポイント
 (2)沖縄でなくてもいい
 (3)ランデブーポイント
 (4)橋本政権の試み
おわりに

第5 章  在外基地再編をめぐる米国内政治とその戦略的波及
 普天間・グアムパッケージとその切り離し……齊藤孝祐
はじめに
1 普天間・グアム移転パッケージの成立
 (1)SACO合意の履行と米国側の懸念
 (2)在沖海兵隊グアム移転案とのパッケージ化
 (3)沖縄の戦略的価値と負担軽減への認識
2 緊縮財政下の基地政策とグアム移転予算の凍結
 (1)反基地運動の高まりと財政制約の強化
 (2)緊縮財政下におけるグアム移転の意味合い
3 切り離しによるグアム移転の加速
 (1)リバランス戦略における切り離しの意味
 (2)議会による切り離しの容認

あとがき
資料  在沖海兵隊の配備の変遷、在日・在沖米軍兵力比較、略語一覧

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